諸事情で国別IPv4アドレスの一覧を眺めていたのですが、なんと南極にもIPアドレスがあるらしいことに気が付きました。その数、256個。北朝鮮でも1024個あるので、それより輪をかけて少ないのですが、そもそも存在するとは思っていませんでした。だって、南極には国という概念はなじまないし…。
調べて見ると、ARIN(主にアメリカのIPを管理しているところ)が南極に割り当てたようです:
arin|AQ|ipv4|23.154.160.0|256|20181017|allocated|b2a4180607264562d56fa4cb02fbc9a4
6つ目の要素は、このIPアドレス範囲が2018年10月17日に予約された事を示しているらしい。すんごく最近ですね。
使われているのか調べる
たった256個となると総当りしたくなるよね…ということで、pingで総当りしてみました:
for i in $(seq 0 255); do echo -n "23.154.160.${i}: " if ping -c 5 23.154.160.${i} > /dev/null 2>&1; then echo 'ok' else echo 'ng' fi done
結果としては、全てのIPに対して、pingは一切通りませんでした。使われてなさそうです。もちろん、pingが通らないからといって使われていないとは限らないのですが。
南極のインターネット事情を想像する
そういえば、南極の観測基地の人たちはどうやってインターネットやってるんでしょう。データセンターおじさんとしては気になる所です。海底ケーブルが敷設されている…わけないですよね。観測基地はたくさんあるけれど、もちろん、都市に比べたらほとんど無人です。とてもじゃないけど、海底ケーブルなんて採算つきませんもん。でも観測データのやりとりや、連絡を考えるとインターネットは繋がってそうな気はします。衛星通信だろうか。
それとも、実は今まで本当にインターネットが使えなかったのが、最近使えるようになったから、割り当てられたのかな。実際に使えるIPアドレスは254個しかありませんから、昭和基地に割り当てられているIPはせいぜい1個だろうか。うーん、NATを使ってなんとかしのぐつもりか?まぁ、対外向けサーバを運用するわけじゃないから、それでもなんとかなるか。
…などと想像するのも楽しいのですが、ためしに検索してみたところ、昭和基地に関してはKDDIの人が毎年1人派遣されてネットワークの維持管理をしているそうです。衛星経由で南極とKDDI山口衛星通信所を3Mbps(3G回線より遅い)で繋いでいて、(観測優先だけど)隊員はLINEもFacebookも使えるそうな。速度はともかく、意外と現代的だ…。構成的には、LINEやFacebookからは日本のIPアドレスとして認識されるのかな。
まぁ、単に登録を間違えただけかもしれない
whoisをIPアドレスに対して行うと、どの団体に割り当てられたのかをチェックすることができます。南極のIPのうちの1つに対してwhoisした結果はこちら:
% whois 23.154.160.100 # # ARIN WHOIS data and services are subject to the Terms of Use # available at: https://www.arin.net/resources/registry/whois/tou/ # # If you see inaccuracies in the results, please report at # https://www.arin.net/resources/registry/whois/inaccuracy_reporting/ # # Copyright 1997-2019, American Registry for Internet Numbers, Ltd. # NetRange: 23.154.160.0 - 23.154.160.255 CIDR: 23.154.160.0/24 NetName: ANYCAST-TEST1 NetHandle: NET-23-154-160-0-1 Parent: NET23 (NET-23-0-0-0-0) NetType: Direct Allocation OriginAS: Organization: Windscribe (WL-242) RegDate: 2018-10-17 Updated: 2018-10-17 Ref: https://rdap.arin.net/registry/ip/23.154.160.0 OrgName: Windscribe OrgId: WL-242 Address: 9251 Yonge St #8901 City: Richmond Hill StateProv: ON PostalCode: L4C 9T3 Country: AQ RegDate: 2016-03-07 Updated: 2018-12-21 Ref: https://rdap.arin.net/registry/entity/WL-242 OrgTechHandle: SAKYE-ARIN OrgTechName: Sak, Yegor OrgTechPhone: +1-647-725-2536 OrgTechEmail: yegor@windscribe.com OrgTechRef: https://rdap.arin.net/registry/entity/SAKYE-ARIN OrgAbuseHandle: ABUSE5829-ARIN OrgAbuseName: Abuse Manager OrgAbusePhone: +1-647-727-8859 OrgAbuseEmail: abuse@windscribe.com OrgAbuseRef: https://rdap.arin.net/registry/entity/ABUSE5829-ARIN
「南極」を示す「Country: AQ」以外の部分の住所は、カナダにある「Windscribe Limited」というVPNを提供する会社の住所と一致しています。…だから、まぁ、申請するときに国コードを間違えて、そのまま誰も気づかないままIPアドレスが割り当てられただけかもしれませんね。
…いや?わかりませんよ。ひょっとすると、国家権力に影響されない最強のVPN…データーヘイブン…を実現するために、南極に拠点を作ろうとしているのかもしれません。イギリスのすぐそばにあった、シーランド公国よりは厄介で、そして頼りになるサービスになるかもしれませんね。知らんけど〜。
windscribeのVPNに”Fake Antarctica”っていうのがあったので検索してみたらここにたどり着きました
どうやってこの申請が通ったのかは分かりませんが少なくとも意図的に登録したんでしょうねぇ…サーバーは普通にカナダにあるみたいです。なんかいたずらとかに使ってみたいですねw